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最高裁判所第二小法廷 昭和32年(オ)652号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由(一)について。

本件記録によれば所論の主張が控訴状に記載されていることは明らかであるが、これらの主張は控訴審における準備手続において主張整理の結果撤回されたものであることは明らかであるから、原審が民訴二五五条三項にかかわらずこれらの主張を口頭弁論において主張することを許されないものと判断したことは正当であり、所論は採るを得ない。

同(二)、(三)について。

所論の「固定資産評価基準及要綱」は、これに添付の別表数式と総合考察すれば、結局、各田の賃貸価格に一定の評価倍数(標準田の反当評価額の反当平均賃貸価格に対する倍率)一一〇六を乗じたものを評価点数とし、これを一点当りの価格一円に乗じて算出する趣旨のものと解される。されば、右の算出方法は、各田の賃貸価格が標準田の賃貸価格に比準しているものであるかぎり、結局評点一点当りの価格に標準田の反当評点数に比準して定められた各田の評点数を乗じて各田の評価額を算出する方法と同一趣旨に帰し、これと同旨の評価方法を定めた右「固定資産評価基準及要綱」の第二節三乃至五の定めるところに合致することとなる。しかるに、豊田村の各田の賃貸価格が土地の等級に応じて比準していないことにつき特段の立証のない本件においては、同村の各田の賃貸価格は一応土地の等級に応じて比準して定められているものと解すべきであるから、前記算出方法は、結局、右基準及要綱第二節三乃至四の定めるところに合致することとなる。そして、豊田村村長が現実に実施した評価方法は、右算出方式に添いつつ一定の評価倍数一一〇六を一一〇〇に置き換えたに過ぎないというのであるから、上告人を含む豊田村納税者は、土地の評価方法が評価基準に添わない違法があるとして攻撃し得るものでないことは原審の判示するとおりである。それ故、右の見解に反する所論は、採用のかぎりでない。

同(四)について。

原審の認定するところによれば昭和二七年度における家屋の評価は前年度の評価を基準としたものではなく、新なる基準により各家屋の一々につきその種類、用途、構造別に分ち、構造については基礎土台、柱、屋根等各部につき現物にあたつて乙第二号証の二の評価調書記載のとおり認めたというのであるから、同号証の認定記載は一応適正であると解することができ、これに基き判定評価し、価格を決定したことは正当であるとした原審の判断は所論の如き違法の点はない。それ故所論は採るに足りない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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